年俸制で教授をめざせ!
「大幅アップ!960万円増...更改」などと、プロ野球もオフシーズンで、契約更改真っ盛りの今日この頃である。
「年俸」という言葉を聞くと真っ先に思い浮かぶのがプロ野球選手の契約更改である。
「600万減」、「1800万up」、「300万円増」、「840万円増」「300万円減」など、派手な見出しがニュースとなる。
年俸制...そんな言葉は大学の教員には無縁だと思っていたが、
ついに、国立大学の教員にも年俸制の導入が始まろうとしている。
文科省にはそのための「年俸制導入促進費」が予算として確保されている。文科省の資料(直リンク)の
10ページ目「年俸制導入促進費」から引用しよう。
退職手当の予算措置手法など、現 行制度の基本的な枠組は崩さない範囲において、年俸制の本格導入に向けて、必要 な財政支援を行う。
(略)
24億円(いわゆる袋予算として確保)
(略)
「国立大学改革プラン」(平成25年11月26日公表)において、人事・給与 システムの弾力化を進めることとしており、年俸制については、特に教員の流動性 が求められる分野において、改革加速期間中に1万人規模で導入していくこととし ている
ちなみに国立大学改革プランのページはこちら。
背景はいろいろあるが、人材の流動化というのが一番であろう。
では、大学における年俸制とはどのようなものになるのであろうか。プロ野球選手の様に派手なものだろうか?
野球選手と額は違えど、
60万減、180万up, 30万増, 84万増, 30万円減
などと、なるのだろうか?
前述の「年俸制導入促進費」によって、全国の国立大学で年俸制に移行した教員にとって最も大きな違いは、
先ほどの文科省の資料から引用すると、
(1)定年退職した場合の退職手当相当額と(2)切替え時点で仮に自己都合退職したものとして算定した退職手当相当額との差額を、切替え時点か ら定年までの残存期間で除して算出した額(国家公務員準拠)を積算することとしている。切替え時点で自己都合退職したものとして算定した退職手当相当額は、実際に退職した時点で支払う。
とのことである。これまでの退職金の支給額は「大学教員の退職金」
に書いた様に、、退職日の俸給月額と勤続年数によって数千万円の退職金をもらっていた訳である。
ただ、この仕組みは「教員の流動化:退職金の通算問題」にまとめた様に、大学教員の流動化にとって大きな障害となっている。
この障害を取り除くこともあってか、年俸制では、
などとなっている様だ。年俸額によるのであるが、当面、年俸制に移行しても不利益の無い様になっている様である。
(勤続年数の点で不利益にならないのか、少し疑問があるが。。)
退職金の分割支給は移行した教員にメリットがあるのではと思われる。
将来何かの間違いで「懲戒解雇」になっても(おいおい)、退職金を少しづつ
もらっておけば損しない、などというメリット(?)もあるかもしれないし、
後から数千万もらうより、先にもらって投資する方が良いであろう。
(使ってしまうかもしれない、というのは置いといて)
他方、年俸制の業績給がどのように決まるのか、
は不透明であるが、「アメリカ化する大学」に書いた様に、
「 多く研究費をとってくる教員には多く給与が支払われる」という制度になっていくのであろう。
科研費の間接経費の何割かが給与に反映される、
という話も聞こえてくる。トップジャーナルに論文を掲載し、大型予算をとってくる給与の多い勝ち組教員と
大型予算をとってこれない給与の少ない負け組教員に二分される時代が到来するのである!
(二分とまではいかないだろうけど。。。)
「予算申請めんどくせぇし、そんなに金なくても研究できるし」とか言ってると、給料まで少なくなるのである。
さて、これから教授をめざす若手教員は、年俸制に移行するのは自由であるが、一度移行すると戻れない
らしいので、よく考えて、教授をめざせ!
理研のユニットリーダーはトップエリートなのか?
twitterで、サイエンスライターの
片瀬久美子氏、公務員の佐藤まり氏によって、下記(リンク先)の様なやりとり
があった。
小保方さんが就任している理研のユニットリーダーという職は、一般の研究員よりも上級職です。応募倍率もかなり高く、給料も一般の研究者よりもずっと上です。任期もたった1年ではありません。 RT @mari_yurihime 理研研究者はトップエリートではないです。一年任期の非常勤職員。
— 片瀬久美子 (@kumikokatase) 2014, 3月 16
「理化学研究所のユニットリーダーはどういう待遇なのか?」
という疑問について、少し調べたのでまとめておく。
文末のソースにあるように、理化学研究所のユニットリーダーは
- 常勤(週40時間, フルタイム労働)
- 有期雇用労働者(1年以下の契約期間を定めて雇用)
である。その意味で大学でいうところの「特任教員」と同じであろうか。
給与は年齢にもよると思うが、以前まとめた
「ポスドク・特任教員(特任助教, 特任講師, 特任准教授, 特任教授)の給与」
が参考になるだろう。同じく理研のポスドク「基礎科学特別研究員」よりは給与は高いのであろう(こちらも若手PDにとっては高給である)。
ちなみに理化学研究所は平成22年度にこのユニットリーダー等の給与決定法について不明瞭な部分があったらしく
会計検査院から改善を要求されている。
研究系管理職の年俸について、原則として、就任直前の年収額と理研が定めた算定方法による金額とを比較して、前者が上回る場合には、後者に一定の率を乗じて加算した額とするなどとしている一方で、
特に理事長が必要と認める場合には、例外的取扱いができるとしていた。そして、年俸決定の実態についてみると、20、21両年度における研究系管理職の中に、例外的取扱いにより年俸を決定されている者が相当数見受けられ、また、それらの理由等についても十分に示すことができない状況となっていて、その運用が不明瞭なものとなっていた。
というわけで、待遇も上層部の自由にできる、違う意味での科学者の自由な楽園なのかもしれない。
後述の任期の無い研究員については「独立行政法人理化学研究所の役職員の報酬・給与等について」に平成24年度の平均給与などが載っている。
さて、理研の研究者がトップエリートかどうかだが、
一概に「理研の研究者」といっても、理研には様々な研究者がいる。
テニュアのある(任期のない)研究職としては主任研究員(大学の教授に相当、大学教授と兼務している人も居る)、
専任研究員(大学の准教授、講師相当)、研究員(助教相当)
などがある。(過去記事「教授相当の独法研究員をめざせ!」参照)
これらの研究職以外はユニットリーダーなどの強そうな名前が付いていても
、テニュアではなく(テニュアトラックでもない)、任期の確実に切れる、
待遇としては条件の良いポスドクの様なものである。
(wikipedia:理化学研究所より)
大半の者は1年契約であり、1年ごとに厳しい研究評価をくだされる。研究業績が基準に満たされない時は、雇用が解消される。一方で、年契約のシステムは研究者の流動性を生んでいる。優秀な研究者は理研で研究成果をあげて、ステップアップをかねて他の研究機関に移っていく。
雇用条件としては、大学のテニュアトラック付の特任教員の方が良い場合もあるだろうが、
研究室主催者として、後述のように3〜5人の部下を持てる予算が付くのは大きな魅力である。
(大学のテニュアトラックの特任教員だとせいぜい1人か2人では。後は学生をつけてもらえるかどうか。)
その意味で、トップエリートのキャリアパスの選択肢としてあり得るとも言えるかもしれない。
(トップエリートが何かはともかくとして、まぁ雰囲気で。)
そのあたりは@Mochimasaさんのツイートを引用しておく。
小保方氏のポストが薄給の底辺ポストか問われると、ユニットリーダーとしての採用である以上、そんなはずはない。一方で、トップエリートかと問われると、5年の任期付きの職をそう思わない人もいるだろう。より薄給で講義の義務もあってパーマネントの仕事に価値を見出す人もいるわけで。
— Mochimasa (@Mochimasa) 2014, 3月 16
(パーマネントとは任期のないこと。テニュアと同じ意。)科学者の自由な楽園・理化学研究所が舞台となったSTAP細胞事件は、ここ最近では学術業界で最も大きなスキャンダルであり、
若手研究者にとっても目のはなせない事件となってしまったのではないかと思われる。
当初は不謹慎ではあるが「他人の不幸は蜜の味」
という面もあったが、ここまで驚くような不正疑惑が次々とでてくると、
「ええ。。。マジでぇ。。」
とドン引きで脱力感に苛まれる。
そろそろ一段落の気配であるし、年度末学会シーズン、そして、3月、4月は別れと出会いの季節である。
気を取り直して日々の研究に邁進しようではないか。レッツ教授をめざせ!

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下記、理研ユニットリーダーに関するソース。
今公開されている理研の採用情報には
「ユニットリーダー」の職種は無い様なので、過去の情報をアーカイブより探してみた(こちら)。
下記にその待遇部分を抜き出してみた。
任期は原則5年。(雇用契約は年度ごとに行います)
評価は5年ごとに行われ、研究室リーダー個人の評価および主宰する研究室全体の業績評価やセンターへの貢献度などにより
総合的に評価されます。評価により、6年目以降の契約の延長・更新の可能性があります(最長10年)。
ただし、国勢など諸般の事情により変更する事があります。
給与は、経験、能力、実績に応じた年俸制で、通勤手当、住宅手当の支給あり。社会保の適用有り。
休日は、土日、祝日、年末年始(12/29-1/3)、当研究所設立記念日。
その他、当研究所規程による。
また、ユニットリーダーというのがどのような職種であるかについては、
少し古いが(2007年)、日本生理学雑誌に
掲載されていた、
理化学研究所脳科学総合研究センター知的脳機能研究グループ チームリーダーおよびユニットリーダー公募のお知らせ(2ページ目, リンク切修正:2014/09/05)
にもある。
ユニットは小型で、3~5名程度の構成です。
これは部局によっても違うのかもしれないが、チームより小さいというのは同じであろう。
大学入試の舞台裏:試験監督や出題・採点(スーパー雑務)の見返りとは...
将来の大学教授候補の第一関門・運命の分れ道である、
大学入試シーズンの到来である。
そんな大学入試も、現職の大学教員たちにとっては、
「スーパー雑務」以外の
何ものでもない。以前、「工学部ヒラノ教授と4人の秘書たち」に関する記事でも引用したが、
日本の大学教官が最も緊張する雑務は、入学試験というスーパー雑務である。2日間にわたるセンター試験と、
それに続く学科入試で、日本の大学はアメリカの大学に毎年一週間分の遅れをとっているはずだ。
ということで、この雑務は、実時間では一週間、時間の分断やストレスを考慮すると、
甚大なダメージを大学教員に与えているといえるであろう。
そして、その見返りはいかに。
優秀で意欲的な学生が自分の大学に入ってくれて、社会で羽ばたき、一廉の人物になってくれれば
それは嬉しいことに違いない。しかしそれは時間の掛かることである。
もっと短期的に考えて、優秀で意欲的な学生が自分の大学に入ってくれて、
自分の研究室に来てくれれば、その苦労は報われるかもしれない。
それでも4年ぐらいの時間は掛かる。
もっと短期的な見返りがある。それは「入試手当」である。
例えば、東京大学では「東京大学教職員給与規則」:「第56条(第53条関係)」の第1表に
「大学入試センター試験及び本学第2次学力試験に係る業務の区分及び手当額」
として示されている。下記にその一部を抜粋する。
業務の区分 | 手当額(東京大学) |
---|---|
出題委員 | 1科目7万円 |
採点委員 | 日当1万円 |
総監督又は総監督補佐 | 日当1万円 |
試験監督者(大学入試センター試験) | 日当(第1日目)1万1千円 |
日当(第2日目) 8千円 | |
試験監督者(第2次学力試験) | 日当 8千円 |
「センター試験の試験監督で1万も貰えるのかよっ!」という意見もあるかもしれないが、
「新聞1面に載るかもしれない…」
など、ストレスを勘案すると割にあわない仕事である。
1日目はリスニングもあるし、二日目より時間も長いからであろう、3千円高い。
また、出題委員が1科目7万円とは全く割に合わない。驚くほど割にあわない。
費やしている時間や出題ミスのストレスを考えると、試験監督の7倍の手当とはどうしても思えない。
他大学ではどうであろうか。
名古屋大学に関しては「名古屋大学職員入試手当支給細則」がある。
センター試験に関しては、同じ仕事であるはずなのに、東京大学と手当が違うのが不思議である。
二次試験の監督の日当は東京大学より名古屋大学の方が千円高い。
また、二次試験の出題委員は東京大学より名古屋大学の方が前期・後期あわせて二千円分、楽だということだろうか。
名古屋大学の採点委員は2,000枚超で1試験あたり1万8千円、2000枚以下で9千円となっている。
ジャスト2000枚だったら悔しすぎるだろう(1900枚台でも充分悔しいはず)。
しかも日当じゃなくて1試験あたりとは!(東京大学は日当)。
ちなみに、東京大学の大学院試験の出題委員の手当は、
「1試験当たり1万円」となっている。
1人で全科目作成しても1万円....割にあわない仕事である。(もちろんそんな専攻はないだろうけど。。。弱小部局だと、一人一人の負担が大きい。)
いろいろツッコミどころ満載でまとまりがなくなったが、
昨年の教育再生実行会議の提言で、今後
スーパー雑務を何とかする方向になっていくと思われるが、
手当は要らないから、いち早く雑務をなくして欲しいものである。
教育と研究を頑張って教授をめざせ!

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ポスドク・特任教員(特任助教, 特任講師, 特任准教授, 特任教授)の給与
大学教授をめざす若手にとって、キャリアパスの最初のステップは
学振DCやPD, そして学位取得後のポストドクターや特任教員である。
以下では気になる各種ポスドクや特任教員の給与についてまとめておこう。
注) 特任助教〜教授は北海道大学の内規による(賞与込み。大学によって異なるので参考程度に。)
時間給換算は月給を160時間で割ったもの。
産総研は時間給なので、160倍して月給を計算。
各種研究員等 | 給与(月給) | 時間給 |
---|---|---|
TA(博士前期) | - | 1200 |
TA(博士後期) | - | 1400 |
学振DC | 20万 | 1250 |
国立環境研究所 准特別 | 24.4万 | 1525 |
国立環境研究所 特別 | 28.1万 | 1756 |
特任助教* | 30万 | 1875 |
国立遺伝学研究所 | 34.1666万 | 2135 |
産総研(1) | 35.2万 | 2200 |
JST-PD(D取得直後) | 35.949万 | 2246.8 |
学振PD | 36.2万 | 2262.5 |
産総研(2) | 37.6万 | 2350 |
産総研(3) | 40万 | 2500 |
特任講師* | 40万 | 2500 |
JAXA | 40.36万 | 2522.5 |
原子力開発機構 | 42万 | 2625 |
学振SPD | 44.6万 | 2787.5 |
特任准教授* | 45万 | 2812.5 |
理研基礎特研 | 48.7万 | 3043.75 |
特任教授* | 60万 | 3750 |
下記、各種ソース。
- 学振
http://www.jsps.go.jp/j-pd/pd_oubo.htm
JSTの博士号取得後は
http://www.jst.go.jp/johokokai/joho/pdf/kenkyusya.pdf
にある, R-6号となっており, 年俸431万3,880円。月給35万9490円。
ただし「基準とする」なので、どの号とするかはプロジェクトリーダー(PL)に任されていると考えられる。
一般にこれよりも高い印象。PLによるけど理研と同程度はもらえる?
http://www.nig.ac.jp/information/NIGPostdoctoralFellow2014-0617-0716.html
http://www.jaea.go.jp/saiyou/internship/internship34.html
昔は理研と同額だったと思うが、3.11の影響で減額となっている模様。
- 国立環境研究所
6ページに准特別研究員, 特別研究員の俸給表がある。
表に載せたのは一番低い額。経験で上がるのだと思われる。
https://www.nies.go.jp/kihon/kitei/kt_kyuyok.pdf
http://www.riken.jp/careers/programs/spdr/career2014/
http://www.aist.go.jp/aist_j/outline/comp-legal/pdf/kyuyo-k.pdf
http://www.jaxa.jp/employ/misc/h26project.pdf
- 特任教員
- 北大
http://www.hokudai.ac.jp/jimuk/reiki/reiki_honbun/u0100617001.html
他大学では俸給表があって、経験によってテニュア教員と同様に給与が決まるはず。
北大は職階で定額となっている。
-
- 阪大
http://www.osaka-u.ac.jp/ja/guide/information/joho/files_jinji/065_20111128.pdf
AランクからRランクまである。RランクがTA(博士前期), QランクがTA(博士後期)。
Aランクだと時給9001円で144万ぐらい貰えることになる。。。
- その他のソース
ポストドクターの種類(博士の生き方:10年前の情報)は情報は古いけど参考になるのではと思います。
大学教員の仕事は「考える」ことである。
大学教員は日々の講義や日々の研究で常に様々なことを
考える仕事である。
どのように講義の構成をしようか、どうすれば判り易く学生に伝わるか。。。
どのように研究をすすめていくか、どのように研究成果をまとめるか。。
新しい研究テーマを考えたり、優秀な学生獲得戦略を考えたり。。。
特に研究には「新しいアイディア」が必要であり、「世界初」の研究成果でないと意味がない。
このように、日々「考えること」を仕事にしている職業は何も大学教員だけではない。
広告会社の人々や、一般企業に勤める人々もそうであろう。日々様々な企画を考え、
それらについて議論し、コンセンサスが得られれば、それを業務として実施するのである。
では皆どのようにして効率的に「考えること」によって、
日々新しいものを生み出していっているのだろうか?
そのような疑問にこたえてくれる本が世の中には数多くある。「企画書」に関するノウハウ本である。
例えば、

企画書 つくり方見せ方の技術―誰も教えてくれなかった超テクニック (スーパー・ラーニング)
- 作者: 藤村正宏
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ための助言が書いてある。これは論文がなかなか書けないときにも役立つ助言で、要約すると、
初稿は推敲をせずに一気に書く、走るように書く。水泳に例えるなら、息継ぎせずに一気に泳ぐ。センテンスは短く、書きたいことから書く。主張、結論から書く。自分がいちばん言いたいことから書く。自分が他の研究者へ伝えたいことは何か?思いついたら忘れないうちにどんどん書く
August 10, 2013
となる。筆がすすまないとき、参考にするとよいだろう。
また、広告企画の人が書いた本「考具」にもとても参考になることが書いてある。
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アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない
これはもともと、文末に示した書籍「アイデアのつくり方」に載っているとのことである。
そして、新しいアイデアを
少しだけ新しくても「新しい」のです
ということで、新しい研究テーマを考える際にも参考になる。
少しだけ新しくても「世界初」の研究なのである。
また、この本では「考具」(考える道具)として、21個のやり方が書いてある。
例えば、「マンダラート」。
①一つのテーマについて9マスの紙の各マスを埋める。
②そのうちの重要な幾つかについて、さらに9マスをつくってキーワード・文章で埋める。
などである。これでどんどんアイデアがでてくる。これは頭の中を空っぽにして、アイデアを出してから
よいものを選ぶ、という行為である。
アイディアや企画につながる頭の使い方は、拡げて絞って、また拡げて絞る。
拡げるときには奔放に。
絞るときはシンプルに。
と、企画文書も論文の初稿を再構成して推敲するときも、まさにブレーンストーミング
なのである。
アイデアを出しまくって、さらにそれを絞ってシンプルな文書にして論文として出版する。
前回も書いたが、
アイデアを形(論文)にまでもっていかないと、研究者としての未来はない。
多くのアイデアを論文にして、教授をめざせ!

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研究者として生き残るための仕事術
情報技術の進歩により、現代の我々は情報の嵐の中を生きている。
研究テーマとして「面白そうなこと」「やってみたいこと」の情報は日々、インターネット
から無尽蔵に入ってくるし、検索エンジンを使えば、それまで考えてもみなかった
新しい「面白そうな」研究テーマに出会う、思いつくこともあるだろう。
しかし、我々人間は有限の寿命を持っている。
人生に残された時間は「面白そうなこと」を全てやるには短すぎる。
また、同時に多くの「面白そうなこと」に手をつけると、何一つ「成果」として
残らず、仕掛け研究テーマが山積し、論文は長らく出版されず、他の研究者に先を越され、
研究競争に負けてしまう。アイディアを形(論文)にまでもっていかないと、研究者としての未来はない。
では、どのように「最優先にやるべき大事なこと」を決めていけばいいのだろうか?
また、どのように片っ端から要領よく「面白そうなこと」をこなし、
成果を上げ、研究者として生き残り、「教授」をめざしていけばいいのだろうか?
そのような疑問にこたえてくれる本が、
島岡要氏(元 ハーバード大学医学部准教授、現 三重大学教授)
による「やるべきことが見えてくる 研究者の仕事術」である。

やるべきことが見えてくる研究者の仕事術―プロフェッショナル根性論
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以下、amazonより抜粋
「研究者に必要なのは知識や実験技術だけではない!」プレゼン力・時間管理術・コミュニケーション力など、
10年後の自分に自信が持てる『仕事術』を身につけよう! 研究が思うように進まず途方に暮れた時、
進路に不安を覚えた時、評価されてないんじゃないかと不満を感じた時…本書を読めば、今起こすべき行動が見えてくる。
時間のない人は最初の方の「その1」という15ページ程度だけでも読むといい。
著者いわく、
本書では「その1」が全体のアブストラクトの役目を果たしています。
忙しい方はまずはこの章だけを読んだだけでも、重要なポイントがわかるように心掛けました。
とあり、いかにも理系の研究者らしい本の構成になっている。
この「その1」から、印象に残った幾つかの文章を抜き書きしておこう。
研究という仕事をする意味とは、自分が重要と考える問題に取り組むための研究費と
環境を獲得し、成果を論文として発表し、社会に問うというサイクルの中で切磋琢磨し、
人間的成長を遂げる過程にある
そして、その「人間的成長」のための指針として、
「研究者として仕事をすべき10の原則」が記してある。
以下にそのステップを記しておこう。
1. 興味を持てる得意分野を発見する(好きよりも得意にこだわる)
2. 最初は自分で学ぶ (仕上げは専門家に質問する、時間管理し、継続的に学ぶ)
3. 師匠を持つ
(弟子の成長目標は、いずれ師匠を超えることではなく、師匠とは違ったアングルで、
師匠以上のインパクトを世の中に与える仕事をいつの日か成し遂げること)
4. 現場で恥をかく
(恥をかいても(rejectされても)発表・論文投稿し、質問し、露出を高め、自分を研究コミュニティの中で知らしめる)
5. 失敗を恐れつつも、果敢に挑戦する(恐れるべきは失敗ではなく、失敗を恐れて挑戦できなくなること)
6. 自分の世界で一番になり成功体験を得る(自分が一番になれる小さな世界から始める)
7. 研究者としての自信をつける(自分の研究を褒めて認めてくれるコミュニティに属する。調子のいいときに登り詰めろ!)
8. 井の中の蛙であったことに気付き、打ちのめされる(成長するための潜伏期間、成功とは、失敗から失敗へと情熱を失わずに進む能力である)
9. すべてを知ることはできないことを理解する(自分が何を知らないかを明確にする。謙虚になる。)
10. 自分の新しい見識を世に問うていく(謙虚ではあるが臆病ではない。)
上記の原則に関連して、「その2」以降、「その11」まである。
目次はamazonで見る事ができる。
コラムもなかなか面白く、特に著者のブログにもある
「うまく質問するために覚えておくとよい10のポイント」は為になる。
詳しくはリンク先をご覧頂ければよいが、短く要約すると、
1)マイクを使う、2)会場が静まるのを待って質問
3)「素人の質問で申し訳ないのですが...」など言う必要なし
4)演者をファースト・ネームで呼ばない、5)しゃべりすぎない
6)短く簡潔に、7)2つ以上質問をしない
8)質問+少し自分のことを売り込む
9)声を張る、10)質問することで自分を成長させる
と、特に3)、7)、8)はなるほど、実践してみよう、という気になる。
本書の他にも、世の中には多くの「仕事術」や「プロジェクトマネジメント」などビジネス書、自己啓発本が
あるが、本書の付録にある「研究者の自己啓発とキャリア形成のための20冊」はためになる。
本書の前書き「はじめに」にあるが、
「将来楽をするために若いうちに努力すべき」という「先行努力・逃げ切り型」
のライフスタイルで一生安定した生活が保証されると信じることができた時代がありました。
今までの蓄えをうまく使ってあとは楽して逃げ切りたいという、
私が"ヘタレ"と呼んでいるマインド・セットを、
私自身を含め多くの人が心の片隅に持っているのではないでしょうか。
(中略)
研究者がプロフェッショナル/エキスパートをめざす過程では、仕事の最大の報酬は人間的成長なのです。
と、我々若手研究者は、研究を通じて人間的に成長しつづけ、プロフェッショナルな研究者として生き残り、
ヘタレでない教授をめざせ!

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アカポスに就けない人の特徴〜今のアカポスには何が求められているのか〜
団塊ジュニア世代が40歳前後になり、普通であれば准教授になっていて、さらに
早い人は教授になりはじめている。一方、同世代でいまだポスドク・助教で苦しんでいる人たちも大勢いる。
企業では、団塊ジュニア世代が課長へとなっている年齢だが、なかなか課長になれない人が多いという記事を
前々回、「「8割は准教授にさえなれません」と「7割は課長にさえなれません」」で書いたことの反応として、
課長になれないのは富士通の様な大企業だけだ、、、という反応もあったが必ずしもそうではない。
例えば、下記の本にも「課長になれない」という文句が謳われている。

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現代の企業は組織のスリム化と称して管理職の数を減らしており、
部下つきの課長になるのは簡単なことではない。
そして課長になれない人の特徴として、
<課長になれない人の特徴>
■仕事がつらそう
■飲み屋で仕事の話をする
■上司の指示に忠実に従う
■我が身を守って逃げ道を作る
■自らのプレゼンテーションに酔う
■時間を守らない etc.
など30の「残念キャリアの行動パターン」が示されている。
これらは「印象論」であるように思えるが、本質をついているような行動もあるようだ。
さて、本題のアカポス(大学教員、公的機関の研究員等)の現状であるが、
現代の大学は少子化や国立大学の法人化、運営交付金の削減、任期制の導入、
テニュアトラック制などで、任期のない教員ポストの数を減らしており、
任期のない、個室のある大学教員になるのは簡単なことではない。
とでもなろうか。そして、そのような厳しい状況で、
「アカポス(任期なし)に就けない人の特徴」とはなんだろうか?「残念キャリアの行動パターン」などあるだろうか?
■ポスドクなのに就職活動をしていない。
■論文が少ない。
■共著論文が少ない。
■学会発表はするが、論文が出ていない。
■学会で全く質問しない。
■ボスが偉いのを自分が偉いと勘違いしている。
■一カ所で長いことポスドク・助教をしている。
■出身大学でポスドク・助教をしている。
■都落ちを嫌う。
■私大、地方大学の助教ポストは眼中にない。
など、少し考えてみると、思いつくがどうだろうか。
例えば、最後に書いた「私大、地方大学の助教は眼中にない。」というのは、
twitterで話題になっていた「医学生物学研究者のための総合ポータルサイト」の記事
にもある。
大学院時代の恩師から某私大の助手(今で言う助教)のポストがあいているとの打診があった。
しかし当時は、自分はそんなチャチなところに行くべき人間ではない、
と即断をして、その助け舟には乗らなかった。
と、環境の良いラボで学生・ポスドクをしていると、このような勘違いをしてしまう。
実際にアカポス(任期なし)に就けていないポスドクと話をしていて一番感じるのは
「ポスドクなのに就職活動をしていない(もしくは応募数がすごく少ない)」ということである。
危機感の欠如である。
ポスドクは2年や3年という任期がある。そして、確実に任期が切れる。
もちろん、ポスドクの間に成果を挙げた後に出ている公募を探す、、、というのがもっともらしいかも
しれない。しかし、募集研究分野が自分に適合したアカポス(任期なし)の公募は5年〜10年に一つあるかないかという可能性だってある。
チャンスは逃してはならないのである。目的と手段を混同してはならない。
ポスドクの間は、すぐれた成果を挙げるのも、公募に応募してポスト(任期なし)を得るためである。
しかし、そもそも公募に応募しなければアカポス(任期なし)を得ることは殆どできない。
tenure:「いつアカポス(任期なし)に応募するの?」
とあるPD:「もう少し業績が出てから。任期も1年と少し残ってるし、、」
tenure:「はぁ!?今でしょっ!!(そして教授をめざせ!)」

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