特任教員(特任教授、特任准教授, 特任講師, 特任助教)とは何か?

「任期付の助教」と「特任助教」、何が違うの?

大学教員としての職階に, 教授, 准教授, 講師, 助教があるのは, 本ブログでも幾度か取り上げてきた。
また, その給与体系なども具体例をあげて説明してきた。では最近よく目にする特任助教や特任准教授
など、「特任○○」という教員は「特任」の付かない教員とどのように違うのだろうか?
(大学によって「特任」ではなく「特命」や「特定」の場合があるが、後述のように同様の条件である)。


「特任」が付いた職の特徴を一言で述べると「任期がある」職であることと言える。


しかし、「特任」が付されていなくても

  • 「任期5年, 再任あり。」
  • 「任期5年, 再任あり。再任の場合の 任期は3年とし、1 回を限度とする。」
  • 「任期5年, 再任なし」

など、任期の付された「特任」の付かない教員の公募がある。


果たして何が違うのか。


そもそも1996年までは, 大学教員に任期を付けることは法律的に禁止されていた。
なぜなら、「大学教員任期制」(知恵蔵2011)にあるように、

日本では被雇用者の権利を保護するために、1年を超えて、年限を限定した雇用契約はできない。

ということになっているためである。これは大学教員に限らず、「有期雇用契約」に関する一般的なこととして決められており,
全労連・総合労働局」のサイトにも「有期雇用契約」Q&A
として詳しい記述がある。これは大学において, 若手教員の流動性を促すこと、
欧米の大学と同じようなテニュアトラック制度を導入することと反する制度であるため、
1997年に「大学の教員等の任期に関する法律(平成9年6月13日法律第82号)」が成立、
施行されて、これまで任期を付していなかったポストにも自由に任期を付すことができるようになった。
つまり、大学設置基準に基づく専任教員数に含まれる教員にも任期を付すことができる、ということである。
この法律は電子政府法令用語検索
「大学の教員等の任期に関する法律」で検索しても原文を読むことができる。


これらに基づいて、各大学の公式なページでは、教員の任期に関する規則が公開されている。
例えば東京大学では
東京大学における教員の任期に関する規則
として公開されている。


一方で従来の「1年を超えて、年限を限定した雇用契約はできない。」という「有期雇用契約」にあたる、
1年以下の契約期間を定めて雇用する「特定有期雇用教員」も存在し、
大学個別に「特定有期雇用教職員の就業に関する規程」などが
公開されている。
例えば、東京大学では
東京大学特定有期雇用教職員の就業に関する規程
として公開されている。この中で, 東京大学では「特任教員」を規定している。


以上のように、歴史的な経緯もあり、実質同じような契約期間の職でも「特任」が付いている場合と付いていない場合があるわけである。
そして、国立大学法人では, 設置基準に含まれる定員内の教員は運営交付金で給与が支出されるが、
特定有期雇用教員は外部資金や寄付金で給与が支出される



つまり、

  • 特任の付かない教員=専任教員(運営交付金による)
  • 特任の付く教員=特定有期雇用教員(寄付金等の特定の経費による)

というように区別される。

雇用条件としては何が違うの?

もちろん俸給表も異なるのだが、最も大きいのは「退職金」に関する問題である。
以前まとめたように退職金の計算には「在職期間」が重要となる。
これは東京大学では
東京大学教職員退職手当規則
として、公開されている規則で定められており, 任期の付された専任教員に関しては
第7条の11に

東京大学における教員の任期に関する規則に基づき期間を定めて雇用する教員
(当該雇用の終了に伴い退職手当の支給を受ける者は除く)が雇用期間満了の日又はその翌日に引き続き教職員となった場合は、
教職員として在職した期間に当該期間を定めて雇用された期間を含むものとする。

としており、雇用期間満了もしくは任期中に任期の無い専任教員になれば在職期間通算される。
一方で, 「特任教員」は前述の東京大学特定有期雇用教職員の就業に関する規程

また、東京大学教職員退職手当規則(平成16年規則第15号。ただし、第4条、第7条第6項から第11項、第8条及び第9条を除く。)中「教職員」とあるのは「任期付特別教員」と読み替えて準用し、退職手当を支給することができる。

となっており, 専任教員に対する退職手当の規則が適用されないどころか、退職手当が支給されないこともある(年俸制など)。
つまり、「特任教員」は途中で任期のないテニュア専任教員になっても在職期間は通算されないのであるが、「特任」の付かない任期の付いた専任教員は、任期中に任期の無いテニュア教員になると在職期間は通算される。


これは大きな違いである。


博士取得直後の若手は給与の高いポスドクや職階の高い年俸制の「特定有期雇用教員」
に就けば、これらの不利益は解消できるかと思われる。
一方で、シニアな研究者で将来、大学教授をめざすのであれば、同じ任期付でも「特任」の付いた特定有期雇用教員ではなく、「特任」の付かない専任教員になることをおすすめする。


現状のテニュアトラック制度は外部資金によって進められているため、ほとんどが「特定有期雇用教員」としてのキャリアのスタートである。
今後、テニュアトラック制度が定着し、「任期付専任教員」からキャリアをスタートできるようになることが望ましい。

特任, 特定, 特命など

上では「特定有期雇用教員」は「特任教員」してきたが、これは大学によって呼び名が異なる。例えば、
京都大学では「特定助教, 特定講師, 特定准教授, 特定教授」などとなっている。
また神戸大学, 名古屋工業大学, 富山大学などでは「特命助教, 特命講師, 特命准教授, 特命教授」などとなっている。
(ただし、部局によって違う場合もある様だ。。。複雑。)

ヒラノ教授をめざせ!

前回、2007年4月以降に誕生した「助教」、「准教授」という大学教員の職階の認知度を論じた。
大学教員の職階として、部局長などの役職を除くと「一番上」の職階はいうまでもなく「教授」である。
それらの教員数の分布はどうなっているのだろうか。
例えば、東京大学の「職員数 (平成22年5月1日現在)」によると、

教授 1,282名
准教授 893名
講師  253名
助教 1,336名
助手  64名

となっており、助教に次いで教授が多く、部局長などの役職に就いていない「ヒラノ教授」(ヒラの教授)が千数百名存在するであろうことが判る。

そんな「教授」の仕事について、興味深い話が満載の「工学部ヒラノ教授」という本がある。

工学部ヒラノ教授

工学部ヒラノ教授

下記、amazonより抜粋。

大学設置基準大綱、大学院重点化、独立法人への道―朝令暮改文科省に翻弄され、
会議と書類の山に埋もれながらも、講義という決闘に挑み、
研究費と優秀な学生獲得に腐心する日々。
大学出世スゴロクを上がるべく、平社員ならぬ平教授は今日も奮闘す。
筑波大、東工大、中央大の教壇から見た、工学部実録秘話。

「実録秘話」ということで、ほとんど実名で周辺の人々が出てくるだけに面白い。
その点は同じ著者の前作である
「すべて僕に任せてください―東工大モーレツ天才助教授の悲劇」
と同じである。ちょっと心配になって
「そこまで書いていいの?」と思ってしまうほど。

すべて僕に任せてください―東工大モーレツ天才助教授の悲劇

すべて僕に任せてください―東工大モーレツ天才助教授の悲劇

理工系特有の事情や、時代背景など、一般的でない話も多いが、
文系と同じ一般教養部に所属されていたことや、
前年度まで中央大学で教授(東工大定年後)をされていたことなどから、
これから教授を目指す若手研究者にとって必読の有用な本であると思われる。



以下では、本文中で印象に残った文章を幾つか抜き書きしておこう。
理工系の研究者の生き馬の目を抜くが如くである研究競争の有様は、

新たな知識を吸収してその道の専門家になるには、すくなくとも2〜3年はかかる。
一流になるには、更に2〜3年の時間が必要である。
「量産せよ!質は量について来る」の言い伝えのとおり、50編の論文を書けば
その中に4つ5つは、ピカリと光るものが含まれている。
だから50編書けば一・五流, 100編書けば一流になれる。

という文章によくあらわれている。



また、著者の「ヒラノ教授」をめざすモチベーションは

なるべく早く教授になりたいと思った公式の理由は、
二流の教授に気を使うことなく、生涯の研究テーマに取り組み、
国際AA級の研究者になりたいと思ったからである。



とのことで、これは多くの若手の准教授、助教が感じていることであろう。
しかし、著者は、実父が地方国立大で長いこと50歳を過ぎても助教授であった
ことで、

学生時代から、重症の”教授パラノイア"にかかっていたのである。

とのことで、

息子が誰かから、「君のお父さんはもう50を過ぎたはずだが、まだ助教授なんだね」
と言われるようなことは、絶対にあってはならないーー。

という事を強く心に抱き、助教授から教授へとステップアップしていったそうだ。



また、これらの大学教員としての出世を「大学スゴロク」と表現し、

日本の国立大学工学部では、30代で教授という人は10人に1人もいない。
一方で50代で助教授という人も、10人に1人以下である。
(中略)
スゴロクには「1回休み」、「2回休み」、「振り出しに戻る」などの罰則がある。
大学スゴロクでは「40歳を超えても助手」が「1回休み」、
「50歳を超えても助教授」が「2回休み」に相当する。

などと、年齢と職階の関係を表現している。


「工学部ヒラノ教授」の内容を再度、別の記事として取り上げることがあるかもしれないが、
一読した感想としては、文章に一貫性がない点(読み直せば簡単にみつかるようなミスが沢山。赤ペンを入れたくなりますよ、ヒラノ教授!)
が少し目につくものの、本書は類書に無い貴重な内容を含んでいて面白く、
大学周辺に居る人ならばイッキに読んでしまえるだろう。
本の内容は大学でのコーヒーブレークや、研究会の懇親会や新年会、
忘年会などの楽しい雑談のネタとなるであろう。



最後に「ヒラノ教授」こと今野浩先生の略歴

東大工学部応用物理卒 (22歳), 東大院応用物理学修了(24歳), 電中研研究員(24歳-33歳), 筑波大助教授(33歳-41歳), 東工大教授(41歳-60歳),
東工大院研究科長(56歳-58歳), 東工大理財工学センター長(58歳-60歳), 中央大教授(60歳-70歳)



「ヒラノ教授」には「教授パラノイア」から解放され、心安らかなる老後を送ってほしいと願う。



さて。



まだ老い先長い、我々若手の研究者は、一に論文、二に論文、三、四も論文、五も論文、、、、と、

100編の論文を書いて、一流の教授をめざせ!

職名の認知度:「助教」と「准教授」

2007年3月まで, 日本の多くの大学で, 大学教授をめざすための標準的なキャリアステップは,
助手-講師-助教授-教授
という職階であった。
人・分野によっては
助手-助教授-教授
だったり,
講師-助教授-教授
だったり, 長いこと助手をして、
助手-教授
なんて人も居れば, 前回書いたように
国研や独立行政法人でキャリアステップを踏んで出世した後に教授になる人、
会社勤めの後にいきなり教授としてやってくる人などが居る。


2007年4月より「学校教育法の一部を改正する法律」により「助教授」の職階は廃止され、
新たに「助教」と「准教授」が置かれた。旧来の「助教授」は殆どそのまま「准教授」へなり、
旧来の「助手」は、教授候補の研究者である「助教」と、名前の通り研究の補助や事務などを専ら担う
「助手」とに分かれることになった。



「大学教員」というと、皆「教授」であると思っている人も世の中には結構居る。


私の大学時代の友人は大学教授の息子であったが、幼少の頃、友人の父が助手・講師だったときに他の人から
「お父さん、大学教授なんだって?すごいなぁ!」
といわれ、複雑な思いをした、と言っていた。


特に「助手」という言葉は自動車の「助手席」に代表されるように、
何かを手助けする補助的な人、というイメージがあり、博士の学位をもっている人でも就く職というイメージと
かけ離れた職名である。その点を改善したのが、上述の「助教」への職名変更である。



では、2007年4月より出現した新しい職階である「助教」と「准教授」の世の中での認知度はいかなるものであろうか?
最近では東日本大震災時の東京電力福島第一原子力発電所事故‎以来、メディアに露出が多い小出裕章・京大助教などの
影響で「助教」の認知度も高まってきたかもしれない。

また、少し前になるが、テレビドラマの「ガリレオ」で主人公の「湯川准教授」
などから、准教授も一般への認知度を上げたことだろう。(本サイト記事:ドラマ・ガリレオ主人公のエリート度)



さて、これらの認知度を表す一つのパラメータとして、
漫画の題名としてそれぞれ「助教」、「准教授」が使われたものがどれだけあるあるだろうか?


amazonで調べたところ、助教をタイトルに用いたものは全くなく、
准教授は5点かある。たとえば下記。

今後、助教を主人公にした漫画や小説が出版されることが期待される。

ちなみに、「教授」をタイトルの一部に含む漫画はamazonによると137件もある(先ほどの准教授ものは除く)。
その中で一番人気があるのが、下記の「天才 柳沢教授の生活」シリーズの様である。


さぁ、助教、准教授を経て、認知度の高い「教授」をめざせ!

教授相当の独法研究員をめざせ!

教授をめざし, 日々トップジャーナルに研究成果を発表すべく, 研究に励んでいるトップレベルの若手研究者は
必ずしも大学に在籍するの助教や准教授だけではない。旧国立研究所である独立行政法人には,
研究員, 主任研究員, 専任研究員, 主幹研究員など, 法人によって異なる「研究員」の職階が存在する.
また, 国研時代は給与体系も国立大学法人と同様であったと思われるが, 以前「国立大学法人における給与の大学間格差
でも記述したように, 国立大学法人の間でも大きな格差がある現在では, 独法の間で格差があるはずである。
wikipediaの「独立行政法人一覧」を見ると, 多くの省で様々な独立行政法人になっている
旧国立研究所があるのがわかる。

例えば,

  1. 総務省 情報通信研究機構
  2. 財務省 酒類総合研究所
  3. 文部科学省 物質・材料研究機構, 防災科学技術研究所, 理化学研究所, 宇宙航空研究開発機構, 日本原子力研究開発機構
  4. 厚生労働省 国立がん研究センター
  5. 農林水産省 農業・食品産業技術総合研究機構, 農業生物資源研究所, 森林総合研究所
  6. 経済産業省 産業技術総合研究所
  7. 国土交通省 土木研究所
  8. 環境省 国立環境研究所

などがある。以下、最大規模の研究所である文部科学省系の「理化学研究所」、経済産業省系の「産業技術総合研究所
を例にとり、職階や給与体系について調査結果をまとめてみたい。

さて、その前にサイエンスポータルにある職階の説明を
以下に引用しよう。

教授相当 : (研究チームの長相当)大学の教授、部・室・グループ長等
准教授相当 : (研究チームの副長相当)大学の助教授、准教授、主任研究員等
講師相当 : (研究チームの研究員相当)大学の講師(非常勤含む)、助教、助手、ポスドク、研究員、准研究員(リサーチアソシエイト)等

また、研究者人材データベースにも同様の記述があるので
引用しておく。

研究職A [ Senior Researcher ] : 大学・高専等の教授 研究機関の部・室・グループ長等
研究職B [ Mid-level Researcher ] : 大学・高専等の准教授, 研究機関の主任研究員等
研究職C [ Entry-level Researcher ] :大学・高専等の講師(非常勤含む)、助教、助手, 研究機関のポスドク、研究員、准研究員(リサーチアソシエイト)等

教授相当に対応する、研究機関の「部・室・グループ長等」は「部」か「室」か「グループ」かで大きく違うようにも
思えるが、給与面では学科長や学部長のように「役職手当」が違うと考えればいいかもしれない。
さて、外部から見ていてよくわからないのが研究所における「准教授相当」の職である。
例えば、理化学研究所では「専任研究員」というのがそれにあたると考えられ、理化学研究所では「教授相当」が
「主任研究員」であり、その「主任研究員」のの権限が大学における教授よりは大きいようである。
一方で、「産業技術総合研究所」の「主任研究員」は准教授相当のようであり、それぞれ
「グループリーダー」「グループ長」が教授相当にあたると考えられる。
給与に関しては
産業技術総合研究所の給与規定は「独立行政法人産業技術総合研究所職員給与規程
として公開されており, 研究職俸給表は1級から5級まであり, 大学における
教育職俸給表」と対応が付いている。
例えば「独立行政法人産業技術総合研究所の役職員の報酬・給与等について」にあるように, 2級(研究員), 3級(主任研究員, 研究員),
4級(研究グループ長, 研究チーム長, 主任研究員), 5級(ユニット長)などとなっている様だ。

理化学研究所については, 俸給表と職階を関連づける詳しい資料を見つけることができなかったのだが、「独立行政法人理化学研究所の役職員の報酬・給与等について(平成22年度)
や, 「平成 22 年度実績報告書」にあるように, 研究員の流動性確保のためから, 主任研究員, 准主任研究員のみならず, 専任研究員, 研究員を含む定年制研究職員にも
年俸制が導入されている様だ(平成22年度では、「定年制研究職員 344 人のうち、74 人が年俸制となった」とある)。


教授をめざす上で、大学に在職するものとしては, 以上に説明した独立行政法人の研究者たちは, 教育等に時間を
とられずに研究に専任できるため、研究の実績上では大きなライバルになるであろう。ただし、大学には大学の
良さがあり, 研究にプラスの影響を与えるであろう、基礎概念を常に意識し再考する教育や
学生という常に新しい人材が流動的に研究室に入ってくる環境からは
独立行政法人では生まれない「新しい研究」が出てくると信じたいものである。

できればこのクラスまでの大学の教授になってほしい、Eランク大学

前回, 「 あしたのために 〜テニュア(終身在職権)を得る方法〜」として,
Natureの記事を引用し, 大学教授を目指す若手研究者が, どのような戦略で
任期なしの教員になるか, ということについてまとめた. 日本には多数の大学がある.
国公立から私立大学まで, 開学準備中の大学も含めると779校ある(wikipedia日本の大学一覧」より).


これだけ多く大学があるのだから, 個人の努力とチャンスさえあれば,
どこかでテニュア職(任期なしの教員)に就くことは十分可能であると思われる.
もちろん, その難易度は研究分野に依存するのではあるが.


しかし, 近年の少子化
により18歳人口は年々減少傾向にあるため, 特に私立大学では,
せっかく苦労して任期なし教員になっても, その大学の経営状況が思わしくなければ,
給与減, 研究・教育環境の改悪などに直面することになる. 例えば本ページの
左下のリンク先の「大学教員公募についてのメモ(52連敗氏)」の中にある「危ない大学の特徴」にあるような現実がそこに待ち受けている
かもしれない.


国立大学法人でも, 給与削減, 大学院定員の充足率の低下による教員ポストの削減,
運営交付金の削減により, 定常的な研究教育費が削減されていっている.


このように大学をとりまく環境は厳しいが, そのような中でも, より良い研究・教育環境を
求めて日々研究(幅広い意味でも)していくことが肝要である.


今回は私立大学の任期なしポストへ就くことを想定し,
島野 清志 (著) 危ない大学・消える大学 2012年版 (YELL books)を参考に, 就職先・転出先としての私立大学について考えてみたいと思う.

この本では, 「入試偏差値および総定員充足率による私立大学分類」として
SA, A1, A2, B, C, D, E, F, G, Nと大学を分類(ランク付け)している. そして, Eランクまでの大学について
「できればこのクラスまでに入ってもらいたい」としている.


この先, 18歳人口がさらに減少していくことは明らかであるので,
EランクからFランクへ, DランクからEランクヘ....と下がっていくのは間違いないように思われる.
そう考えると, B, Cぐらいまでのランクの大学へ就職・転出することが望ましい.


具体的な大学名を公表して, ランク付けしてあるのが本書の特徴ではあるが, ほとんどそれぞれの大学入試の難易度と変わらない. (実際に偏差値がランク付けの基準に入っている. 代ゼミネット入試ランキング表を参照)
Nランクを「危ない大学・消える大学の候補校」として公表していること, 定員充足率の情報が加味されていること, また大学人にとっては
経営改善するための「指針」のようなことまで書いてあるのは興味深い. (就職や転出先を考えている研究者にとっては関係ないが...)


個別の情報は実際に書籍をみてもらう事にして, ここでは
「大学受験に賭ける君に贈る5つのアドバイス」を一部改変して
「大学教授をめざす君に贈る, 就職先・転出先大学選択のための5つのアドバイス」として記しておこう。

「大学教授をめざす君に贈る, 就職先・転出先大学選択のための5つのアドバイス
1. 大学選びは学部より大学名で選ぶべし
2. 研究者をバリバリ育てたいのなら女子大より共学を
3. 納得がいかないのなら迷わずポスドク・非常勤講師を選ぶ
4. 自己の研究・教育スタイルにあった大学を選ぶ
5. 同じレベルなら歴史のある大学を選ぶこと





1, 5は受験生向けと全く同じで本書の記述をそのまま記した. 2, 3, 4 は教員用に一部改変したが,
内容的にはほぼ変わっていない. 「3. 納得がいかないのなら迷わずポスドク・非常勤講師を選ぶ」は分野によって違うと思うが,
特に若いうちは, 研究・教育業績を積む為に, 雑務や研究・教育以外のことで消耗するよりはずっといいと思われる.


本書で紹介されている, 私立大学全般の情報として「大学の定員別, エリア別の定員充足率」は
日本私立学校振興・共済事業団」から最新の情報を得ることができる.
例えば, 「平成 22(2010)年度私立大学・短期大学等入学志願動向
などがそれである.



殆ど自分のメモのために本文書を書いている訳だが、同様に教員公募戦線に参戦しているライバル達の参考にもなればと思う。

あしたのために 〜テニュア(終身在職権)を得る方法〜

このダイアリーでも幾度か話題にしてきたように、
日本の教授を目指すキャリアパスは急速に変化している.
これはアメリカ等の大学で導入されているテニュアトラック制度を日本に導入しようと、
事業仕分けでも文句を付けられた「振興調整費」でおこなわれている
「若手の自立的研究環境整備促進」というプロジェクトにおいて平成18年より
すすめられている。それらの状況についてはこのダイアリーで過去にまとめた
日本でいうテニュア教員とは「任期のない教員」のことである。


安定した職を得ることは人生設計において重要なことである。
そのためには、研究者・教育者として生きていくには「テニュア」を
取得することが必要となる。



ではどのような戦略で「テニュア』を取得するように行動すればいいのだろうか?



その問いに対する一つの回答として、
2010年のネイチャー(Nature)に掲載されている
"Academia: The changing face of tenure"
という記事がある。特にその中の
"Tips from academics: How to get tenure"
という部分を抜粋して紹介しよう。

以下、原文を和訳し、漫画「あしたのジョー」(ちば てつや、高森 朝雄)で、
プロボクサーをめざすジョー宛てに丹下が書いたメッセージを真似て装飾し、
内容も国内の事情にあわせて意訳、一部改変してある。

あしたのために(その1)
= 強力で明確な研究プロフィールをつくれ=
特定の研究領域で名前を売る様にすべし。
頻繁にその領域の会議に出席し、自分の仕事について講演・ポスター発表をし,
自分のウェブサイトで講演内容・ポスターを公開し、研究概要や要点を提供すること。
また、自分の仕事を宣伝してくれる2、3人の年上の共同研究者をリストアップすべし。
いつも特定の研究者と共同研究しないこと。特定の研究者とのみ共同研究をしていると、
自分独りで仕事をすることができないという印象を引き起こすなり。

あしたのために(その2)
=部局の善良な構成員になれ=
すべての同僚と上手くやっていく部局(学科、専攻、講座、研究所の部門等)
のメンバーとなるべし。同僚が他の部局に話す内容は自分の評価に影響するなり。
論文で先任の部局メンバーを共著者にすべし。

あしたのために(その3)
=研究者のネットワークをつくれ=
自分の研究分野の専門家である数人の同僚に連絡をとるべし。
仕事に関して継続的に情報交換すべし。
この交流は自分の研究に関して終身在職権再調査委員会
テニュア審査等)への推薦書、意見書等へと繋がるなり。

あしたのために(その4)
=二人の師に従事せよ=
1人目の師は年上の共同研究者で、自分が研究プログラムを組立てて、
所属する団体の終身在職権(テニュア)評価基準に従って仕事を最優先させるのを
助けてくれる人であること。
2人目の師は1人目の師より若く、自分と共に実質的に働いて、
大学・研究所の終身在職権(テニュア)要件と
期待されている条件を満たすことを助けてくれる人であること。

あしたのために(その5)
=教育も手を抜くな=
多くの時間を教育に割くべし。
終身在職権(テニュア)を得るには研究と教育の両方に力を入れるべし。

あしたのために(その6)
=自分を信じろ=
自分が終身在職権(テニュア)を得ることができる、と自信を持つべし。
日々、研究するときは集中して研究し、寝るときは寝るべし。
不眠で研究することは、非効率なり。

日本の大学には任期の無い職として、助教、講師、准教授、教授の職階がある訳だが、
人事権を持つ教授以外はテニュアに付いていないようなものだ、ということができるかもしれない。
全学的な中期計画に即しない教員や部局内での将来計画に合致しない教員は
リストラ的に外部にでる事を求められる。


准教授、助教の職階にある人も上述した「あしたのために(そのn(nは正の整数)))」
に類することを心に留め、「出ていけ」と言われたときにサクッと出て行ける様に
日々精進していこうではありませんか。

テニュアトラックの現在

平成18年(2006年)よりはじまった、科学技術振興調整費による
若手の自立的研究環境整備促進
に関して, 既に4年目となり, 中間評価でテニュア化が決定したも居る様だ。

以下引用

科学技術振興調整費「若手研究者の自立的研究環境整備促進」プログラムで採用されていた
特任准教授(任期4年半の、いわゆる「テニュアトラック教員」)の身分から、
大学の正規雇用の准教授(任期が無い、いわゆる普通の准教授)になった

以下に, 現在走っている科学技術振興調整費によるテニュアトラックプログラムをまとめてみよう。
若手の自立的研究環境整備促進」(仕分けされた?)JSTのテニュアトラック普及・定着事業」にまとめてあるが、以前このブログでまとめたように、
大学教員のポスト数は大学の規模に依存している(当たり前だが。。)
そのため、大学のクラス(旧帝大やら旧官立、、とやら)でまとめてみた。
国立大学(総合大学より)でみると、かなりの大学でテニュアトラックプログラムが走っているようだ。
博士取得が近い人もしくは博士取得後10年以内の人は来年、
再来年と、テニュアトラックの応募を目指して情報収集されることをおすすめする。

(2006-)

(2007-)

  • 旧官立11大

(2006-)

(2007-)

(2008-)

(2010-)

(2007-)

(2008-)

(2010-)

    • 東海大学「国際的研究者を育て得るメンター研究者養成」
  • その他プログラムが走っている主な国立大学

(2006-)

(2007-)

(2008-)

(2009-)

(2010-)