あしたのために 〜テニュア(終身在職権)を得る方法〜

このダイアリーでも幾度か話題にしてきたように、
日本の教授を目指すキャリアパスは急速に変化している.
これはアメリカ等の大学で導入されているテニュアトラック制度を日本に導入しようと、
事業仕分けでも文句を付けられた「振興調整費」でおこなわれている
「若手の自立的研究環境整備促進」というプロジェクトにおいて平成18年より
すすめられている。それらの状況についてはこのダイアリーで過去にまとめた
日本でいうテニュア教員とは「任期のない教員」のことである。


安定した職を得ることは人生設計において重要なことである。
そのためには、研究者・教育者として生きていくには「テニュア」を
取得することが必要となる。



ではどのような戦略で「テニュア』を取得するように行動すればいいのだろうか?



その問いに対する一つの回答として、
2010年のネイチャー(Nature)に掲載されている
"Academia: The changing face of tenure"
という記事がある。特にその中の
"Tips from academics: How to get tenure"
という部分を抜粋して紹介しよう。

以下、原文を和訳し、漫画「あしたのジョー」(ちば てつや、高森 朝雄)で、
プロボクサーをめざすジョー宛てに丹下が書いたメッセージを真似て装飾し、
内容も国内の事情にあわせて意訳、一部改変してある。

あしたのために(その1)
= 強力で明確な研究プロフィールをつくれ=
特定の研究領域で名前を売る様にすべし。
頻繁にその領域の会議に出席し、自分の仕事について講演・ポスター発表をし,
自分のウェブサイトで講演内容・ポスターを公開し、研究概要や要点を提供すること。
また、自分の仕事を宣伝してくれる2、3人の年上の共同研究者をリストアップすべし。
いつも特定の研究者と共同研究しないこと。特定の研究者とのみ共同研究をしていると、
自分独りで仕事をすることができないという印象を引き起こすなり。

あしたのために(その2)
=部局の善良な構成員になれ=
すべての同僚と上手くやっていく部局(学科、専攻、講座、研究所の部門等)
のメンバーとなるべし。同僚が他の部局に話す内容は自分の評価に影響するなり。
論文で先任の部局メンバーを共著者にすべし。

あしたのために(その3)
=研究者のネットワークをつくれ=
自分の研究分野の専門家である数人の同僚に連絡をとるべし。
仕事に関して継続的に情報交換すべし。
この交流は自分の研究に関して終身在職権再調査委員会
テニュア審査等)への推薦書、意見書等へと繋がるなり。

あしたのために(その4)
=二人の師に従事せよ=
1人目の師は年上の共同研究者で、自分が研究プログラムを組立てて、
所属する団体の終身在職権(テニュア)評価基準に従って仕事を最優先させるのを
助けてくれる人であること。
2人目の師は1人目の師より若く、自分と共に実質的に働いて、
大学・研究所の終身在職権(テニュア)要件と
期待されている条件を満たすことを助けてくれる人であること。

あしたのために(その5)
=教育も手を抜くな=
多くの時間を教育に割くべし。
終身在職権(テニュア)を得るには研究と教育の両方に力を入れるべし。

あしたのために(その6)
=自分を信じろ=
自分が終身在職権(テニュア)を得ることができる、と自信を持つべし。
日々、研究するときは集中して研究し、寝るときは寝るべし。
不眠で研究することは、非効率なり。

日本の大学には任期の無い職として、助教、講師、准教授、教授の職階がある訳だが、
人事権を持つ教授以外はテニュアに付いていないようなものだ、ということができるかもしれない。
全学的な中期計画に即しない教員や部局内での将来計画に合致しない教員は
リストラ的に外部にでる事を求められる。


准教授、助教の職階にある人も上述した「あしたのために(そのn(nは正の整数)))」
に類することを心に留め、「出ていけ」と言われたときにサクッと出て行ける様に
日々精進していこうではありませんか。