追記

川合真紀: 科学者・技術者のキャリアパス-人材流動の光と影-, 化学と工業, Vol.61-6, 569 (2008).
に, 退職金の通算がされない場合、大きな不利益を被るという例が具体的に論じられているので以下に引用しておく.

一つシミュレーションをしてみよう。学位取得後に 2 年間のポスドクを経た後に 30 歳で助教に採用され、
65 歳に教授として定年を迎えるとしよう。同じ大学 法人で 35 年勤めた場合と、
国公私立大学や研究法人 など異なる法人間を移動しつつキャリアを上げていっ た場合では、
生涯賃金に大きな差が出る。東京大学教 職員退職手当規則によると、
勤続 35 年で定年退職す る場合の退職金は 59.28 月分なので、
仮に教授として の最後の俸給月額が 55 万円だとすると、
退職金総額 は 3,260 万円である。旧国立大学間を移動する場合は、
それぞれの大学での勤続年数が通算されるので、今の ところは同一大学に勤務しているケースと同じであ る。
次に、助教を 5 年間勤めた後に別の法人(公立や 私立)で准教授として 15 年勤め、
さらに次のステッ プも異なる法人で教授として 15 年勤めた場合を計算 してみよう。
自己都合による退職と、定年・雇用期間 満了による退職とでは待遇が大分異なるが、
ここでは 現実的に助教及び准教授は自己都合により退職したと する。
助教及び准教授退職時の俸給月額をそれぞれ 40 万円と 45 万円とすると、
同じ 35 年勤めた後に手 にする退職金は 1,743 万円である。素直に現状の規則 を読むと、
およそ 1,500 万円の差が出ることになる。教授に昇進する年齢が高いと、
この差はもっと開く。 キャリアパスの中に独立行政法人の研究所が入る場合 も同様である。