「8割は准教授にさえなれません」と「7割は課長にさえなれません」、、、それなら教授をめざせ!
理系の修士1年生(M1)は、学部から大学院に進学して1年が経とうとしているこの季節、
就職活動まっただ中である。大学院入学直後は、希望に満ちた顔で
「博士過程に進学する予定です!」
と言っていた学生も、アカデミックポスト(アカポス:大学の教員、公的研究機関の研究職)
を得る困難さの噂を聞いて断念したのか、
現実路線(?)に戻り、目の色を変えて就職戦線へ旅立っていく。
確かに、アカポスを得る道は険しい。
以前からこのブログで取り上げてきた様に、団塊ジュニア世代の大学院進学に
あわせた大学院重点化を経てアカポス争奪の競争率は大幅に上がった。
東京大学の清水明教授(「大学院の変容」(2000年5月記))により、
2000年当時の日本で最も優秀な学生が揃うと考えられている東京大学の大学院生(物理学)
のアカポス就職事情が記されている。
僕が大学院生だった頃(1984年当時)、大学にきちんと 来る大学院生だったら,
その過半数が,アカデミックポストに就くことができた。
今は(1992年以降)、大学にきちんと 来る大学院生でも,
2割ぐらいの人しか,アカデミックポストに就くことはできない。
(一部改変)とのことである。
つまり、博士を取得しても8割の人はアカポスに就けないのである!
これは分野によっては異なり、例えば生物系の様にもっと厳しい分野もある一方で、
もっとポストに就きやすい分野もあるだろう。
この変容の原因は、従来なら大学院(博士課程)に進学しなかった(意識の低い、基礎学力もない)
学生も定員充足のために大学院進学をすすめられて進学しているという事情もあるだろう。
(見かけ上の倍率があがっただけで、上位の一部の学生は心配しないで良い、という事もできるかもしれない)
いずれにせよ、全ての博士進学者が希望通りにアカポスに就けた時代は昔から無かった訳で、
公募が一つあったとき、その倍率が3倍だろうが10倍だろうが、100倍だろうが、
昔からアカポスに就けない人の方が多い事に変わりはないのである。
そのような学問で生計をたてていくことの困難さの普遍性について述べた有名な本がある。
マックス ウェーバー (著)「職業としての学問」である。
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以下、amazonから転載。
1919年にミュンヘンで行った講演の邦訳。第一次大戦後の混迷のドイツにおいて、
生計を得る道としての学問と職業としての学問について語り、若者たちに学問と政策の峻別を説いた講演集。
なんと、100年近く前のドイツでの話である。
以下にインパクトのある文言を抜き書きしておこう。
大学に職を奉ずるものの生活はすべて僥倖の支配下にある。
若い人たちからの就職の相談を受けた場合にも、われわれは
かれに対して自分の言葉の責任を負うことはできない。
全くもってその通りである。「教授をめざせ!」などと書いていても、
このブログも全く責任を負うことはできない。
ちなみに「僥倖」とはデジタル大辞泉から引用すると、
僥倖【ぎょうこう】
1 思いがけない幸い。偶然に得る幸運。
2 幸運を願い待つこと。
という意味である。
君は凡庸な連中が年々君を追い越して昇進していくのをみても、腹も立てず
気もくさらさずにいられると思いますか
これは本当によくあることである。「なぜ業績も碌にないアイツが....」と。
しかし、これは企業での出世競争でも同じことだろう。
仕事もできないけど、愛想がよく上司に可愛がられる、要領の良い輩は何処にでも居るのである。
就職活動中のM1の話に戻る。
多くの学生は安定志向で、大企業、有名企業への就職を志望する。
では企業へ就職し、そこで生き残っていくのが容易か?というとそうではない。
最近は「アベノミクス」の影響でいつまで続くか判らないが
少し景気が上向きにあるというが、已然として日本企業の経営状況は厳しい。
また、雇用体系も従来の終身雇用の日本型雇用からグローバル化を目指して
欧米型雇用へとシフトしていく過渡期である(本当にシフトできるのか知らないが)。
企業へ就職する予定のM1には、それらの問題について記述してある本として
「7割は課長にさえなれません」という本があるので、
読まれることをオススメする。ポスドクの話も出てくる。
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本ブログでは、一足先にアカポスの道へと舵を切った者として、
M1の諸君がアカポスを目指す困難さと企業で待ち受ける困難さを天秤にかけ、「教授をめざせ!」
と腹を括ってアカポス・博士課程へと進学することを応援したい。
もちろん、D2-D3でも新卒として就職活動は十分可能(「博士の就職」)である。
分野によっては博士号取得後、企業へ就職してから大学へ戻ってくることも可能である。
最後に「職業としての学問」から、博士課程の学生、ポスドク等の若手研究者へ
多年勤めていれば、自然人々が彼のことを考慮するようになることは十分期待しうる
と
教授というものは、一般に、自分はできるだけ良心的に振舞っているつもりでも、
やはり自分の直弟子(じきでし)を優遇しやすい
という、少しは希望の持てる(場合によっては希望の持てない)言葉を贈る。
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